「通勤電車で気になっていた彼に、思い切って声をかけた日」

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本文:通勤電車の一コマ

毎朝、同じ時間。
同じホームの、3両目のドアのあたり。
私は、無意識のうちに“彼”を目で追っていた。

大きなイヤホンをしていて、本を読んでいたり、スマホを眺めていたり。
たぶん、気づいていないと思うけど…私は半年以上、あなたのことを“知ってる”。

なんてことない、ただの通勤電車の一コマ。
でも、私にとってはちょっとした楽しみだった。


きっかけは、たまたまの出来事

ある朝、電車が急停車して、私はちょっとよろけてしまった。
そのとき、斜め前にいた彼が、ふっと手を出して支えてくれた。

「大丈夫ですか?」

思ってたより低くて、優しい声だった。

「…はい、大丈夫です」

そう言うのがやっとで、顔も見れなかったけど。
その日、会社に着くまで、ずっとドキドキしていた。


「私から話しかけてみたい」と思った

それから数日、電車で彼を見かけても何も話さなかった。
でも、同じ時間に目が合ったとき、彼がちょっとだけ会釈してくれて。

(あ…覚えてくれてるんだ)

その瞬間、胸がふわっと温かくなった。
「私から、もう一歩、踏み出してみたい」って思った。


初めて自分から声をかけた日

その日は電車が遅延していて、ホームで彼と偶然並んで立つ形になった。
私はたぶん、あまり考えずに言葉を出していた。

「最近、この時間帯すごく遅れますよね…」

彼は少し驚いたように、でもすぐに微笑んで
「ほんとですね、いつもギリギリで冷や冷やしてます」って。

たったそれだけの会話だったのに、帰りの電車の中でも、なんだか気持ちが浮いていた。


名前を知ったのは、その一週間後

少しずつ、何気ない会話が増えていった。
「今日寒いですね」とか、「あの駅のカフェ、気になりますよね」とか。

ある朝、彼の方から聞いてくれた。

「そういえば、お名前聞いてもいいですか? よくお会いするので」

ちょっと恥ずかしかったけど、正直うれしかった。

「〇〇です。あなたは?」

名前を知っただけで、なんだか一歩、距離が縮まった気がした。


いま、私たちは…

数週間前、彼の方から「よかったら、今度コーヒーでもどうですか?」って聞いてくれて。
もちろん即答はできなかったけど、私、ちゃんとうなずいてました。

今では、週に一度だけだけど、会社帰りに少しだけ話す時間があります。

お互いに忙しいけど、なんとなく、ここから何か始まるかも――そんな予感があります。


声をかけるのって、怖いけど

「迷惑だったらどうしよう」とか
「変な人だと思われないかな」とか
すごく考えたし、何度もあきらめかけた。

でも、
あのとき一言「遅延、多いですよね」って言えた自分を、
今は少し誇らしく思っています。


おわりに

通勤電車はただの移動時間かもしれない。
でも、ちょっとした偶然の積み重ねが、誰かとの関係を少しずつ育ててくれることもあるんだなって思いました。

あなたにも、いつも見かける“ちょっと気になる人”がいますか?

もしそうなら、ほんの一言が、物語のはじまりになるかもしれませんよ。